アイスブルー(ヒカリのずっと前)
二人で坂道を降りる。
拓海を見た。
小さく見える拓海だが、鈴音よりも少し大きいようだ。
「拓海くん、身長どのくらい?」
鈴音は聞いた。
「……一七○、よりちょっと少ないくらい」
「結城くんと並ぶと、小柄な気がしたけど、そんなに小さくもないね」
「まだ成長中です」
拓海が少し背伸びをして、
それから「結城はひょろっとしておっきいから」
と少し悔しそうにつぶやいた。
「結城くんとは仲がいいみたいね」
「同じ団地に住んでるんです。僕が二階で、結城が三階。小さい頃から一緒です」
「へえ。幼なじみか。いいね」
「はい。」
しばらく無言で坂を降りる。
そういえばこちらに帰って来てから、この坂を誰かと降りたことはなかった。
「どんなお店にしたいんですか?」
拓海が聞いて来た。
「そうね」
鈴音は少し考える。
「お家みたいなお店」
「今みたいな?」
「そう、今みたいな」
鈴音は空を見上げた。
空が高くて、雲は真っ白だ。
「昔、祖母と一緒にあの家に住んでたの。高校を卒業するまで」
急な坂道の終わりが見える。
「ほら、あそこ」
鈴音は拓海の高校へとつながる、広い道の途中にあるバス停を指差した。
「あそこからバスにのって、二十分くらい行くと私立の女子高があるんだけど。知ってる?」
「はい、結城の彼女がその高校です」
「結城くんって彼女いるの?」
鈴音は近寄りがたい雰囲気の結城を思いだして、思わず聞き返した。
「はい、いますよ。可愛い子です」
「へえ。制服は今も変わってないのかな。わたしもそこに通ってたの」
「そうなんですか」