アイスブルー(ヒカリのずっと前)
鈴音は立ち上がり、台所に入って行く。
台所のほうが、北側のせいかいくらか涼しい。
冷蔵庫から麦茶を取り出し、グラスにつぐ。
「思わず、昨日は何してたの?って聞きそうになっちゃった」
鈴音はペロっと舌を出した。
お盆にグラスをのせて、拓海の側に行く。
「どうぞ」
「ありがとうございます。昨日は行きました?」
「うん。行って来た。調べたら来月の頭に講習があるの。だからそれに行こうと思って」
「どのくらい通うんですか」
「一日講義を受けて、最後に試験。だから一日でいいの」
「へえ」
拓海が驚いたというように目を丸くした。
「じゃあ、その日をカレンダーに書き込んでください」
「もうした」
鈴音は少し胸を張る。
「今日は、何か予定ありますか?」
「予定?さあ……」
「じゃあ、メニューを決める前に、近辺をリサーチしましょうか。どんなお客さんが来てくれるのか」
「涼しい時間にしようよ」
鈴音が提案する。
「このカフェのオープンは何時から何時までの予定ですか?」
「午前から夕方まで。ランチ中心で、夜はなしがいいな」
「じゃあ、その時間帯に外にでなくちゃ。陽が陰るのをまってたら、本当のことがわかんない」
拓海が言った。
「うわあ。拓海くん、頭いいね」
鈴音はびっくりした。
「頭はよくないですよ。なんとなくそう思っただけで……」
拓海が照れくさそうにうつむいた。
「じゃあ、もう出る?」
「そうですね」
拓海が頷いた。