アイスブルー(ヒカリのずっと前)
気づくと夕方になっていた。
涼しい風が優しく肌にあたる。
横を見ると、机につっぷして拓海が寝ていた。
顔を横に向け、目を閉じている。
まるで赤ん坊のような無防備な顔。
汗で髪がぬれ、ゆるくウェーブしている。
思わず目にかかった前髪をあげようとして、ふと我に返った。
鈴音は首を振って、立ち上がる。
昼食後、二人で打ち合わせをした。
やはり、幼稚園のママ達に気に入られるようなカフェにしようということで意見がまとまった。
子供のためのちょっとしたメニューも考える。
でも基本的には母親達の休憩場所にしよう、と。
鈴音はノートを前に、メニューを考え始め、そしてうたた寝をしてしまったのだ。
台所に行き、水を飲む。
汗がひいて、少し寒いくらいだった。
「そうか、誕生日」
鈴音はつぶやいて、乾物の入っている引き出しを開けた。
「パウンドケーキなら焼けそう」
鈴音は寝ている拓海を起こさぬよう、静かにケーキを作り出した。
バニラエッセンスの甘い香りが漂う。
祖母もおやつによくケーキを焼いた。
自家製のドライフルーツを入れてくれた。
あまくて、そしてフルーツが少し苦い。
しっとりとしていて、とてもおいしかった。
鈴音はそんなケーキを思い描き、型に流し込みオーブンに入れた。