アイスブルー(ヒカリのずっと前)
「もう」
拓海は頬を膨らました。
「食べ終わった?」
鈴音は空っぽになった拓海のお椀を見てたずねた。
「はい。僕片付けます」
拓海がお皿を重ねて、立ち上がった。
「じゃあ、お願いしよっかな。わたし、お布団用意してくる」
「ありがとうございます」
拓海がペコリと頭を下げた。
鈴音は台所を拓海に任せて、今は鈴音が使っている祖母の部屋の押し入れから、布団をだした。
「やっぱりちょっと湿っぽい」
鈴音は顔をしかめた。
「こんなことになるなら、今日干しとけばよかった」
「敷き布団二枚と、シーツ、枕」
鈴音は押し入れの奥から引っぱりだした。
「よいしょ」
と声をかけて、布団を腕に抱えた。
障子をあけて、よろめきながら廊下を歩く。
ふと布団の向こう側で気配がした。
「持ちます」
拓海の声が聞こえた。
「大丈夫よ」
鈴音が声を張り上げたが、ひょいっと拓海の手が布団を受け取った。
いつもの居間を通り抜け、階段をあがる。
鈴音は拓海の背後からついて、階段を上った。
拓海はその小さな身体で、軽々と布団を持ち上げている。
腕から背中にかけてのラインが、幼そうに見えても一人の男性だった。
鈴音は「変なことはしません」と言った拓海を思い出して、
また笑い出しそうになった。