アイスブルー(ヒカリのずっと前)
いつの間にか、雨音がしなくなった。
拓海は寝付けなくて、右に左に転がる。
階下では、鈴音が寝ている。
不思議な感じだ。
拓海は身体を起こして、携帯を手に取る。
「二時三十分」
時間の表示を見て、声に出して言った。
真夜中。
丑三つ時。
拓海はちょっと怖くなって、薄がけの布団で身体をくるんだ。
写真を見て
「やっぱりな」と思った。
「やっぱり、本当のことだった」
彼女の母親と祖母は、拓海の見た映像の中の人物と一緒だった。
そうじゃないかと思っていたけれど、いざ事実を目の当たりにすると、怖い。
自分がどんどん変わっている。
どんどん不思議なことが起きてる。
これはどんな意味があるのか考えようとすると、拓海の中の不安がふくれあがる。
鈴音が気になった。
自分とどんな関係にあるのか、気になった。
彼女の過去に関係があるのか、未来に関係があるのか。
でも今は、知りたくないという気持ちも生まれて来た。
知った後、自分はどんな自分になってしまうのか、わからないからだ。
雨が大気を冷やし、過ごしやすい気温。
拓海は大きくなった不安をどうにかしようと、布団から出て階段を降りた。
台所はカチカチカチという時計の音だけがしていた。
冷蔵庫が時折ぶうんと音をあげる。
薄暗い中、拓海は冷蔵庫を開けて、中から麦茶を取り出し、コップについだ。
この家の気配。
鈴音も言ってた。
「おばあちゃんの気配がまだ残ってるでしょ?」
「もし見えたらどうしよう」
拓海はそんなことを思って、慌てて頭を振った。