アイスブルー(ヒカリのずっと前)
JRから私鉄へ乗り換えて、二時間弱。
海に近づくに連れて、空の青が濃くなっていく。
結城と拓海は、並んで色あせた青いシートに腰掛ける。
結城はコットン地のラフなパンツ。
窓から入る強い日差しで、頬から首、鎖骨にかけて、明るく輝いて見える。
車内にいる数人の女学生が、ちらりちらりと結城を見る。
拓海はその視線に気づいたが、結城はほとんど無視をした。
「でかける格好じゃなかった」
拓海は自分の格好を見下ろして、軽く溜息をついた。
「でもカメラは持って来た」
結城が拓海の膨らんだポケットを指差した。
「うん」
拓海はポケットの上からカメラを押さえた。
「記念写真、とろう。なんかちょっとした旅みたいだ」
結城はうれしそうに言った。
拓海は規則正しい揺れに、身を任せる。
景色はどんどん流れて行く。
乗客は徐々に減り、車内にはほとんど人がいなくなる。
結城は目を閉じて、うとうとしているようだ。
「海岸」と名のついた駅に到着する。
拓海は結城の肩を軽くたたいておこした。
「おりよう」
目を開けた結城は、優しく微笑むと立ち上がって、ホームに降り立った。
「潮の匂いがする」
拓海は深呼吸した。
「うん。わかめの匂いだ」
結城がにやりと笑っていう。
「なんだよ、その言い方」
拓海は少しふくれて、歩き出した。