アイスブルー(ヒカリのずっと前)
小さな改札を出ると、コンクリートの上に浜辺の砂がおちている。
砂を辿って道路に出ると、車が横切るその向こうに、濃紺の海が見えた。
規則正しい波の音。
海の家から、音楽が聞こえる。
拓海は砂を蹴るように歩いた。
結城を見上げると、手で日差しをよけている。
二人は熱い砂に足を取られながら、とりあえず波打ち際まで歩いて行った。
海水浴客はまばらだ。
夏は終わろうとしている。
足下を見ると、透明なクラゲが打ち上げられている。
結城がしゃがんで、ぷよぷよのクラゲを触った。
「死んでる?」
拓海は結城の後頭部を見下ろしながら言った。
「うん」
結城は貝殻でクラゲを半分に切っている。
「やめろよ」
拓海は顔をしかめた。
「なんで? 死んでるよ」
「それでもさ。痛い気がする」
拓海は言った。
「ふうん」
結城は貝殻を波に投げ捨てると立ち上がった。
「あついな。なんか飲む?」
「あそこ営業してるよ」
拓海は何件か並んでいる海の家を指差した。
「じゃ、ビール」
「だめ、それ。未成年でしょ」
拓海は結城の背中を叩いた。
「ちぇ」
結城は砂を蹴りながら、海の家に向かう。
拓海はその後ろについていった。