LOVE GAME〜あたしの帰る場所〜

「…あたしは、あの人と一緒に育てたかったから。あんたを…」

　深空の態度とは対照的に、逸子の声は静かに響いていた。雄二はそばで、事の成り行きを見守っている。深空は、目を赤くしていた。

「あたしが、勝手に誤解していたって言うの…？」

　深空がそう口にすると、逸子は首を振った。

「…あたしが"母親"になり切れていなかっただけよ。あんたのせいじゃない」

「何よ、それ…！！」

　深空はリビングのドアの柄に手をかけ、背を向けた。

「あたしは味方だったのに… お母さんの"生きる意味"になりたかったのに…！」

　怒りに震えた深空は、そのままリビングのドアを勢いよく開けて、微かな風だけを残して、出て行った。

「深空…っ！」

　立ち上がり、雄二が追い掛けようとする。すると逸子は、「大村さん」と彼に声をかけた。彼は、逸子の方に振り返る。すると、真剣な目をした彼女に、驚いていた。

「あの子に足りないものを、あなたが埋めてやってください。よろしくお願いします」

　そう言った後、逸子は両手を床に付け、頭を下げたのだ。