LOVE GAME〜あたしの帰る場所〜
 雄二は、深空の手をぎゅっと強く握った。その温もりは、本当に温かくて、深空にちゃんと届いている。

(こんな簡単なことで、あたしは安心することができるのに…)

 深空の頭には、昔の逸子の姿が浮かんでいた。

 あの時、ただ黙って手を繋いでさえくれていたら…

 深空は雄二の横顔を見た。すると、彼は不意に口を開く。

「お前のお母さんさ、お前にそっくりだな。…あ、お前がお母さんにそっくりなのか」

 彼は笑った。

「ど、どこがよ?!」

 すごい剣幕で深空は大声をあげる。

「不器用なところ」

 意地悪な笑みを浮かべ、雄二は言った。深空は、タコのような顔を赤くしながら、雄二の背中をグーで何度も叩いた。

「すぐには無理でも、お母さんを好きだった頃にまた戻れるよ」

 雄二がそう口にすると、深空の手の力が抜けて、弱くなる。二人は、そのまま駅の改札へと抜けて行った。

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