LOVE GAME〜あたしの帰る場所〜
「お前、ちゃんとお母さんと話してる?」

 スーパーの帰り道、二人が並んで歩いていると、雄二は思い出したように言い出した。深空は、思わず顔をしかめる。

「…何だよ、その顔」

 雄二が不満そうに眉をひそめた。

「…時々ね。今更、何話したらいいかわからないしさー。それよりも…」

「話、逸らすなよー」

 雄二は空いた手で深空の頭に軽くげんこつを落とす。

「痛ーい! だって、あの人仕事でほとんど家にいないから、生活のリズム合わないんだよー。あたし、眠いから早く寝ちゃうし…」

 深空は、口を尖らせ弁解していた。

「…それよりさ」

 彼女は雄二の方に向き直った。

「先生のご両親て、どんな人?」

「うちの親? うーん…」

 雄二は首を傾げながら、空を眺め、また口を開いた。

「親父は職人だから、頑固で無口、かな。お袋は、どんなときも冷静沈着、あの人は強いよ、ホント」

「そう」

 自分で聞いておきながら、深空のテンションが、急降下していく。

「何だよ、大丈夫だよ。心配すんなって」

 雄二はいつの間にか繋いだ手に、きゅっと力を込める。

「…うん」

 深空は、やはり緊張した面持ちをしていたが、雄二の手のその力強さを受け、深くうなずいた。

< 123 / 376 >

この作品をシェア

pagetop