LOVE GAME〜あたしの帰る場所〜

　彼等がぎこちない会話をしていると、病室のドアが急に開かれた。そして、パタパタというせわしない足音が段々大きくなり、雄二のベッドの前で止まった。

「雄二…」

　そこには、両手に大きなバッグを持った、初老をとおに越えた女性が、悲痛な表情で立っていた。

「雄二、母さんよ。解る？」

　深空を押し退け、雄二の母親、節子【セツコ】が彼の元へと駆け寄った。

（お義母さん…）

　突然の登場に、深空は驚きのあまりその場に突っ立っていた。しかしそんな深空に構うことなく、彼の母親は心配そうに雄二の顔を手で覆い、必死に呼び掛けていた。

「お母さん…？」

「そうよ」

　やはり彼は困惑した表情で首を横に振った。すると、節子は落胆した。

「すいません…」

　彼は、さっき深空に言ったような申し訳なさ気に謝っている。

「…いいのよ。疲れたでしょ。少し眠りなさい」

　節子は優しく微笑み、今度は優しく彼の頬に触れた。雄二は、小さくうなずいて目を閉じた。