LOVE GAME〜あたしの帰る場所〜
(…さて、そろそろ行こ)

 彼女は今日の予定を頭に浮かべ、冷静を取り戻す。携帯を閉じ、生成りのシンプルなトートバッグの中に入れた。そしてそのバッグを肩にかけ、自室を出る。

「出かけるの?」

 階段を下りていると、下からは逸子が声をかけた。

「うん。病院。今日、彼、退院だから」

 だいたいのことを深空から聞かされていた逸子だったが、眉にシワを寄せていた。

「ねぇ」

「ん?」

 安定のいいスニーカーを履きながら、深空は逸子の呼び掛けに返事をする。

「雄二さんのことももちろん大事だけど、自分の体もいたわりなさいよ。あんたが体壊して、赤ちゃんがどうにかなったら、元も子も無いでしょ」

 久しぶりに母親らしい言葉を聞いた、と思いながら深空は笑った。

「笑い事じゃないでしょ」

 不満そうに、逸子がこぼす。

 深空は、つま先を地面に軽く打ち付けながら振り返った。

「ん。解った。…気をつける」

 彼女はそう言うと、玄関のドアノブに手をかけ、「行ってきます」と言い残し、家を出た。

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