LOVE GAME〜あたしの帰る場所〜
 深空が雄二の病室に入ると、既に節子が雄二の荷物などを片付けはじめていた。

「おはようございます」

 深空が、節子に挨拶する。すると、それに気付いた節子は手を止めて、深空の方に向いた。

「深空さん、おはよう」

 優しく笑いかけながら、節子が挨拶を返してきた。

「あの… 先生は…?」

 雄二の姿が見当たらないため、深空がそう尋ねると、「診察よ」と節子は、再び手を動かしながら答えた。

「あ、手伝います」

 深空が彼の荷物を紙袋に詰めようとすると、それを節子が制止した。

「大丈夫よ。あなたはそんな一生懸命、動いたらダメ」

 深空のお腹を指差して、節子が言うのだ。深空は、苦笑いを浮かべた。

「今日は、なんだか朝から気分がいいんです。大丈夫ですよ」

 忘れ物が無いか、使った棚の引き出しを一つずつ確認する。

「…ほとんど終わってるんですね」

「えぇ。緊急入院だから、ほとんど荷物という荷物はなかったから…」

 作業が終わり、節子は手をパンパンと払いながらそう言った。

「あ、戻ってきたわ」

 入口に、真新しい服を着た雄二が立っていた。

「雄二、大丈夫だった?」

「あ、はい。身体の方は問題無いって…」

「そう、よかったわね」

 節子は彼の手を握り、微笑みながら軽く叩いた。

(先生は、ちゃんと愛されて育ったんだ…)

 深空がぼーっと、目の前の二人のやり取りを見つめていると、節子が深空に雄二の荷物の入った紙袋を手渡した。

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