LOVE GAME〜あたしの帰る場所〜
 その後電車に乗り、深空の元のバイト先のファミレスや、雄二が塾長を勤めていた塾の入ったビル、横浜で入った居酒屋、ナイトショウで見た映画館、そして初めてキスした場所… などを順番に回る。

 闇に落ちそうなほどの漆黒の空に、賑やかな繁華街の光が、きらびやかに輝きはじめる頃―

 二人の顔には疲労が色が濃くなっていた。

 ちらっと雄二の顔を見ると、やはり表情はさっきと変わらない。

「もう最後になるけど…」

 時間を見ながら深空がそう切り出すと、深空の人差し指は、ある建物を差していた。

 派手にライトが光る、大きな看板。今し方立ち寄った居酒屋の近くからでも、少し距離のあるあの建物は、目立つその看板のおかげで、よく見えていた。

 深空の指す方を見る雄二の目が、少しだけ大きく開いた。

「ラブホテル…?」

 雄二が少し引き気味に尋ねると、深空は笑いながらうなずいた。

「よく行ってたの?」

「よくってわけじゃないけど、あたし達が結果付き合うきっかけになったところ、って感じかな。…でも、無理して行くことは」

 踵を返し深空は帰ろうとする。しかし、雄二は深空の手を掴み、それを止めた。

「…行くの?」

 彼女が静かに尋ねると、雄二はうなずく。

深空は少しためらったが、彼のその真剣さが彼女の背中を押した。

< 192 / 376 >

この作品をシェア

pagetop