LOVE GAME〜あたしの帰る場所〜
「…付き合ってくれてありがとう。もう出ようか」

 少し焦った彼が、泣いている深空の手を取り、部屋を出ようとする。すると、深空は激しく首を振り潤んだ瞳で、雄二を見る。

「そうじゃない… ここにいるのが嫌なわけじゃなくて…」

 彼女の手から彼へと、震えが伝わっていた。

「そうじゃ、なくて…」

 溢れ出す思いをなかなかうまく言葉にできず、深空が言い淀んでいると、彼は黙って深空の言葉の続きを待っていた。

「もっとお互いに触れ合ったら… 思い出すかも… しれない、かなって…」

 拙い言葉が、深空の口から紡がれていく。

「えっと、それはつまり…」

 雄二は、嫌でも視界に入るあの大きなベッドを見ながら彼女に言葉の意味を確かめる。しかし、彼女は唇をきゅっと結び、寂しそうに笑う。

「ごめん。なんでもない。もう帰ろ」

 雄二の手を丁寧に解き、深空は思いを断ち切るようにサクサクと歩き出す。

(…何言ってるんだ、あたしは)

 彼に何の期待をしてるのだろうか…?

 自分を置いて実家に帰ろうとしている彼に…

 玄関に座り、履いてきたロングブーツに少し手間取りながら足を通す。

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