LOVE GAME〜あたしの帰る場所〜
 雄二の腕枕で、彼の体温を頬で感じながら眠っていると、喉の渇きで目が覚めた深空。彼女は、気の抜けた風船のように、ぼんやりと天井の模様を眺めていた。嘘みたいに静かな部屋。先ほどの嵐のような空気とは一変、隣では雄二が軽いいびきをかいて、眠っていた。

 ホテルの窓は板で塞がれており、なかなか外の様子が解らない。ヘッドボードに埋め込まれている時計を見ると、朝方の5時をまわったところであった。

 深空は、雄二を起こさないようにそっとベッドから降りると、備え付けの小さな冷蔵庫を開けて、ミネラルウォーターを取り出した。そしてそれを飲みながら、適当に脱ぎ捨てた服を手に取って、支度をし始める。

 数分後、すべて整え、彼女はコート抱えて玄関に出るドアに手をかけた。

 聞こえるのは、彼のいびきのみ。

 あの大きなベッドに背を向けて、レバー式のノブをガチャリと下に押す。

(…ありがとう。さよなら)

 心の中でつぶやき、開いたドアの隙間に体を滑り込ませようとした瞬間―

 深空は涙を流していた。

 鼻を赤くさせ、啜り泣く彼女はそのままドアの向こうに消える。

(早く… 行かなきゃ…)

 ブーツを履き、ファスナーをキュッと上にあげる。そして振り返りもせず、深空は雄二をホテルに残したまま、足早にその場を後にした。

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