LOVE GAME〜あたしの帰る場所〜
 深空と雄二の旅立ちは、1ヶ月後に迫っていた。お互い、自分の仕事を整理して雄二の地元に帰る準備を進めていた。時間のある時は、ふたりで部屋の荷物の整理をする。不要なものはすべてまとめて処分し、少しでも引っ越し費用を抑えようとしていた。



 ある日の午前中―

(あ、そうだ)

 トイレの整理をしていた深空は、棚から開封済みだがまだ使用していない妊娠検査薬の存在を思い出していた。

(まだ使えるから、取っておこ)

 それを手で掴み、とりあえずいつものかばんに突っ込んでおく。

 その時、雄二の携帯が鳴り出した。

「携帯、鳴ってるよー」

 ロフトで整理をしている雄二に深空は声をかけるが、返事がなかった。

(あれ)

 首を傾げ、鳴っている彼の携帯を持ちながら、ロフトのはしごに昇る。視線をロフトの床の高さにして、深空は様子をのぞいた。

 彼の姿が目に映ったとき、深空は一瞬、声をかけることをためらったのだ。なぜか、丸まった彼の背中がとても寂しく映ったのだ。その間にも、彼の携帯は着信を知らせるために、鳴りつづけた。すると、ハッと我に返った彼が、後ろに振り向いた。

 彼と目が合い、引っ込めていた携帯を握る手を差し出す。

「電話だよ」

 深空は遠慮がちになりながら、雄二に携帯を渡した。

「サンキュ」

 深空から受けとった電話に、いつもの通り出る雄二を見て、彼女は静かにはしごを降りた。
(…何を見ていたんだろう)

 何があの人の背中を寂しくさせたんだろう…?

 深空はロフトの方を見ながら、よく解らない胸騒ぎに、気分が落ち着かなかった。

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