LOVE GAME〜あたしの帰る場所〜
 美しい聖歌隊の歌声が、教会全体を包み込んだその時、黒いタキシードを着た父親と腕を組んだ新婦がゆっくりと赤い絨毯の上を歩き始めた。

 純白のウェディングドレスに身を包んだ夏美のその姿を目にすると、深空の中で何かがあふれそうになっていた。

 自分もあのドレスを着れたかもしれない…

 いや、あの時の別れは変えようのない運命だった。たとえ、お腹に赤ちゃんがいる事実を後から話していたとしても…

 深空はちらりと隣にいる深雪に目をやった。

(あたしは心から笑えただろうか?)

『俺と一緒に帰っても、お前が心から笑えなくちゃ、意味ねぇだろ… "好きだから"の一言で、お前を縛り付けることはできない…』

 彼女の中に、あの時の雄二の言葉が刻まれていた。

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