LOVE GAME〜あたしの帰る場所〜
(バカみたい… 何を考えてるの)

 彼女は首を振り、頭の中をリセットする。すると、隣にいる深雪が不意に彼女の顔を覗き込んできた。

「ママがないてる。どしたの?」

「…あぁ、あのね、嬉しくても涙は出るんだよ」

 深雪の質問に、涙を拭いながら深空が不器用に笑い答えている。しかし、まだよく解っていない深雪は、不思議そうな顔をして、深空の顔を見つめていた。
「ふーん、そうなんだ」

 ちょうど今、夏美が深空達の前を通り過ぎた。すると、深雪は身を乗り出して、夏美に手を振った。
それに気付いた夏美は、笑いながら深雪に小さく手を振り返す。深雪は嬉しそうに笑った。

 新郎と新婦が並ぶと、オルガンの演奏が止み、神父の話が始まる。

 そして、誓い合い、指輪の交換をし、キスをする…

 目の前で行われているセレモニーを通して、深空の胸の中でいろいろな想いが入り混じる。

 自分が決して歩くことのない、バージンロード…

 もう決してはめることのない、薬指のあのリング…

 彼女はそっと目を閉じた。あふれそうな想いを心にしまい、賛美歌を歌っていた。

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