LOVE GAME〜あたしの帰る場所〜
(いい式だったな…)

 帰りのタクシーの中、深空の膝で眠る深雪の髪を撫でながら、彼女は幸福感に包まれていた。

(疲れちゃったよね)

 幸せそうに眠る深雪の寝顔を見ながら、深空は笑った。

 やがて、目的地のアパートに到着する。深空は深雪を起こしてタクシーを降りた。

 深雪は眠い目を擦りながら、覚束ない足取りで歩いている。深空はそんな深雪の手を取り、部屋の鍵をバッグから取りだそうとした。その時、つむじ風が起こり、深空は思わず目をつむった。

 ゆっくりと目を開け、上になびく髪を見上げると、月明かりに照らされながら、桜の花びらが目の前をひらりひらりと舞い降りている。

 まるで、それは光を纏いながら揺れる妖精のよう―

 その美しさに目を奪われしばらく眺めていると、重力に逆らえない妖精たちは、次々と緩やかに回りながら地面に吸い込まれていく。

< 273 / 376 >

この作品をシェア

pagetop