LOVE GAME〜あたしの帰る場所〜
「可愛いな、あの子」

 深雪の方を見ながら、雄二はぽつりとつぶやいた。

「まぁね」

 食べた皿を下げ、深空は流し台の前に立ち、使った食器を洗いはじめた。

 水の流れる音…

 スポンジの擦れる音…

 食器が軽くぶつかり合う音…

 雄二は、黙って深空の後ろ姿を眺めていた。

 三年前に見た姿と一寸の狂いもなく同じ…

 カチャカチャと音をさせながら洗い物をする彼女の姿。

 両腕が疼く。

 お互いに傷付け合うだけだと解っていても、彼のその衝動を抑えることは難しかった。自分に言い聞かせればするほど、胸の鼓動が速くなり、苦しくなる。

< 289 / 376 >

この作品をシェア

pagetop