LOVE GAME〜あたしの帰る場所〜

「深空…」

「もうあなたと会うことは無いだろうと思って、あなたの忘れ形見として深雪を産む決意をしたの。あたしは誰のものにもならない、好きな人のこどもを産めば、また生きていく意味を見つけることができるかもしれない…　深雪さえいれば、あたしが守ってあげなきゃって、そのことばかり考えて生きてきた…」

　彼の背中は、深空の涙で濡れていた。

「だけど…　だけどね、やっぱりいつもどこかであなたとの暮らしを望んでた。どんなに虚しくなろうとも、あなたのことを考えない夜はなかったよ…」

「…深空」

　彼は向き直り、彼女の顔を両手で挟むと、彼女の目を見つめた。その蒼い目を見つめれば見つめるほど、今まで無理矢理しまっていた感情が飛び出してしまいそうになる…

　しかし、今ここで気持ちに流されてしまったら…？　きっと後戻りなど、絶対にできないだろう。果して、それでいいのか…？

　深空の顔に触れていた手の力が、次第に抜けていく。それを悟った彼女は、彼から目を反らし、下を向いた。

「…昔のあたしだったら、"奥さんから奪ってやろう"とか考えたかな…」

　寂しそうに笑いながら、足元に落ちたジャケットを拾い上げ、雄二に渡す。

「…もう、これっきりにしようね。最後に会えて、良かった」

　わざと明るい声を出し、深空は言った。

「……」

　顔は笑っているのに、彼女の目からはとめどなく涙が流れていた。