LOVE GAME〜あたしの帰る場所〜
 その揺れる彼の顔を見ながら、彼女はふと我に返っていた。

 こんなふうに抱かれたって、何かが変わるわけではないのに…

 またあたしは、この人に固執して生きて行かなければならなくなる……

 彼に体中をキスされながらも、彼女の意識はもう冷めていた。

(やっぱり、虚しいだけ…)

 目を伏せ、彼女の手の力が抜けていくのを感じた雄二は、深空の顔を覗き込んだ。

「深空…?」

「…ごめん」

 体を起こし、彼女は手を伸ばして手近にあったカーディガンを肩に羽織った。

「昔みたいに、もう夢中にはなれないの。あたしには、守らなくちゃいけない
ものがあるから、保守的なのね…」

「深空…」

 雄二は背中を向ける彼女を後ろから抱き締めた。しかし彼女は下を向いたまま何も言葉を交わさなかった。何も言えなかったのだ。

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