LOVE GAME〜あたしの帰る場所〜
「俺…」


 彼が何か言いかけたその時、突然携帯の着信音がそれを遮った。

「…あなたの、じゃない?」

 ジャケットを指差し、深空は促す。彼は小さく溜息をつき、そのジャケットの内ポケットの中を探った。

「……もしもし。あ、君か」

 裸のまま小さな声で電話に出る、雄二。

(奥さん、か…)

 深空はしばらく彼のしまった背中を眺めていたが、下着を手に取り付けはじめていた。

(これが、現実だよね)

 少し可笑しくなりながら、脱いだ服を着る。

(うまくいくはず無いのは、解ってたのに…)
 夕飯の時に後悔の念を感じたのに、自己満足のためだけにこんなことをして


 深空に背中を向けて電話で話しをする雄二をチラリと目をやる。

(もう会わない代わりに深雪を産んだのに…)

 彼女の中でたくさんの想いが交差していた。

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