LOVE GAME〜あたしの帰る場所〜
「俺は女一人も幸せにできない、情けない男なのによ…」

「……」

 口を開けたまま、深空は何も言うことができなかった。ただ彼女の目に映るのは、悔しそうに吐き出す彼の寂しそうな横顔だった。

(あの時…)

 そう、あの時、自分がついて行ってれば…

 彼をこんなふうに苦しめることはなかった。深雪が父親のいない家庭に生まれることもなかった。

 過去をいくら後悔しても、その時間が戻って来ることはないが、あの時の判断が間違っていたから、歯車がどんどん狂い始め、軌道修正ができなくなってしまった…

 深空は窓をじっと見つめながらそう考えていた。

「…翠は、俺を怨んでいるはずだ。深雪ちゃんをさらったのも、そのせいだろう」

「怨む…? どうして?」

 深空は、翠の真剣な目で訴えていた姿を思い出していた。

『私は彼のことを愛しています。…あなたに彼を渡すつもりはありません』

 少なくとも、深空の心には翠の本気の想いが伝わったからだ。

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