LOVE GAME〜あたしの帰る場所〜
「そして、あなたとあの子は、この柵から身を投げるのよ」

 さも楽しそうに翠は付け加えた。そして深空の上半身を柵の向こうに押さえ付けて、わざと崖の下を覗かせる。

「なっ…?!」

 さっきと同じ様に、パラパラと足下の細かい土砂が転がっていく。深空は固唾を飲み込んだ。


 "死ねばよかったのに"

 翠が口にした言葉。かつて自分もこの言葉を使ったことがある。

 現実から逃げようとしたとき、深空はこの言葉を吐き捨てた。



 "死ねばよかったのに"

 あの時、お腹にいた子が、倒れた拍子に死んでしまえば、どんなに気が楽になっただろうか…

 心からそう思ったものだった。

 翠の雄二への愛が、憎しみに変わった今、彼女のつぶやきは、本心なのだろう…

 深空は緊迫したこの状況の中、頭の隅にある"冷静な部分"でそう考えていた。
< 345 / 376 >

この作品をシェア

pagetop