LOVE GAME〜あたしの帰る場所〜
「…や、やめろ」

 殴られた拍子に頭から一筋の血を流している雄二はなんとか立ち上がり、虚な目で翠に近付いていく。翠は、体を強張らせて深空にナイフを向けていた。

「俺を恨んでるなら、俺をこのまま下へ落とせ… 幸せにしてやれなかったのは俺だろ? それともこの山で一緒に死ぬか?」

「……!」

 唇を噛み、強い眼差しを向ける雄二を見つめる翠の手は、震えていた。



 高校時代、親友の好きな人を好きになってしまった。

 彼の笑顔はとても眩しくて、いつも遠くから見ていた。

 でも、彼の笑顔は、いつも親友のもの…

 私の甘酸っぱい恋なんて、実ることはなかった。



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