LOVE GAME〜あたしの帰る場所〜
「深雪ーっ」

 深空は立ち上る煙の中を、血相を変えて進んでいく。目の前の燃え盛る火の海の中へ……

「深空、戻れっ!」

 雄二は力いっぱい叫び、深空の後を追い掛けようと、走り出した。
最後の力を振り絞る雄二…

 彼は深空を力いっぱい引き寄せると、火の外に投げ飛ばした。そして、意識が朦朧とする中、焼けはじめた物置の戸を開け、黒い煙の中に消えて行ったのだ。

 物置に纏わる火は、すぐに物置全体に火が回り、目の前がオレンジ色に染まっていく。その様子を、ガクガクと震えながら深空は見ていた。

 彼女はゆっくりと振り返った。彼女の後ろには、絶望の淵に立った翠が、口を開けて燃える様子を笑いながら眺めていたのだった。

(火を…!)

 深空は何とか立ち上がり、消防署に通報しようと震える手で携帯を取り出した。しかし、たった"119"を押すのもままならないほどに手が震えていたのだ。

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