LOVE GAME〜あたしの帰る場所〜
「はい」

 お冷やをテーブルに置いた夏美は、そんな深空の向かいに座った。

「あ、ありがと… でも、ホール…」

 気だるく顔を上げて深空は、ホールに視線を向ける。

「ホール、吉井ちゃんにお願いしちゃった」

 ペロッと舌を出して夏美はお冷やをひと口飲んだ。

 深空の心配は、夏美の要領の良さで引っ込んでいった。

「…なんか食べたい」

 深空は小さくつぶやく。

「え? だって気持ち悪いんでしょ?」

「うん… でも、食べると少しおさまるの」

 夏美は目を丸くして、彼女の顔を見つめた。

「深空ちゃん、それって…」

 そう言って、顔をあたしに近づけ、彼女は声を低くして続きを口にした。

「妊娠したんじゃない…?」

 夏美の言葉に驚いた深空の目が、夏美の顔をまじまじと見つめた。

「うちのお姉ちゃん、妊娠2ヶ月くらいの時から食べないと気持ち悪いって… 
食べつわりだって言ってた」

「つわり…? だってあたし、この間、生理来たよ? ナプキン借りたじゃない」

 この気持ち悪さは、つわり…? まさか…!

「あっ、そっか… ごめん」

 元の姿勢に戻るが、夏美は眉間にシワを寄せて考えている。

「あ…」

 深空は何かを思い出すように声をあげる。

「え、なに?」

「…いや、でも関係あるのかな」

 深空がぽつりとつぶやくと、夏美は食いついて来る。

「何か心当たりあるの?」

「いや… この間の生理、二日で終わっちゃったなーって…」

 深空がそう言うと、夏美の顔がみるみるうちに曇っていく。

「美空ちゃん、それって…!」

< 76 / 376 >

この作品をシェア

pagetop