LOVE GAME〜あたしの帰る場所〜
(…!)

 それに気が付き、思わず深空の足が止まる。くたびれたスーツを着た彼も、深空に気づく。お互いの顔が解るほどの間合いを保ち、深空は雄二の姿に驚いていた。

「『あたしに会いたければ、自分で会いに来れば』って言ったの、お前だろ」

 不服そうな顔を向け、雄二は一歩一歩、深空に近づいていく。立ち尽くす彼女は、彼の胸に優しく抱かれても、動くことができなかった。

「できれば、その… あんな風に言われた後すぐにでも迎えに行きたかったんだけどよ… なんつーかその… 案外仕事がまた忙しくて… 言い訳だけど…」

 彼は深空の細い体を抱きながら、決まり悪そうに口にする。深空はその温かさに驚きながらも気付いたら目を閉じていた。

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