計算づけのヒロインが愛した正義のヒーロー
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早朝、
散らばった服を集めて
彼女を起こさないように自分の家に戻る。
チャイムを鳴らしてみたが出ず、
まだ寝ているのかと思いつつ
ドアノブを半信半疑で引いてみれば、
鍵が締まっているはずが開きっぱなし。
「愛奏、ドア開けっぱな…し…」
姫の荷物が消えて姿も共になし。
テーブルの上には置手紙と、
7329円が丁寧に並べられている。
“泊まらせてくれてありがとう。
お詫びに私の今の手持ちのお金しか渡せないけど、
感謝の気持ち”
それはもう、人生で一番速く走った。
愛奏のアパートまで行ってみて、
大量の手紙が束にされドアの目の前で陳列されている。
「…あんた、愛奏ちゃんの男だろ」
「…彼女どこにいったんですか」
「引っ越し。そんな金持ってないのに」
突然現る大家は、現状を話した。
『―おかけになった番号は
現在使われておりません…ツーツー…』