計算づけのヒロインが愛した正義のヒーロー


―――



早朝、

散らばった服を集めて

彼女を起こさないように自分の家に戻る。


チャイムを鳴らしてみたが出ず、

まだ寝ているのかと思いつつ

ドアノブを半信半疑で引いてみれば、

鍵が締まっているはずが開きっぱなし。


「愛奏、ドア開けっぱな…し…」


姫の荷物が消えて姿も共になし。


テーブルの上には置手紙と、

7329円が丁寧に並べられている。


“泊まらせてくれてありがとう。

お詫びに私の今の手持ちのお金しか渡せないけど、

感謝の気持ち”


それはもう、人生で一番速く走った。


愛奏のアパートまで行ってみて、

大量の手紙が束にされドアの目の前で陳列されている。


「…あんた、愛奏ちゃんの男だろ」


「…彼女どこにいったんですか」


「引っ越し。そんな金持ってないのに」


突然現る大家は、現状を話した。


『―おかけになった番号は

現在使われておりません…ツーツー…』
< 70 / 82 >

この作品をシェア

pagetop