婚約者から逃げ切るだけの簡単なお仕事です。
「ふふっ、真奈ちゃんにさりげなく撮影スポットを聞いて良かったですわ。
このような場所から撮影するなど、考えてもいませんでしたもの」
私は上機嫌で呟きながら、社会科準備室の扉をガラリと開けた。
ちなみに、真奈ちゃんからこの教室について教えてもらえなかった場合や
真奈ちゃんがこの社会科準備室(当たりスポット)を知らなかったりした場合、
私はたまたまその場に居合わせたフリをして通りすがりに二人の様子を激写するつもりでいた。
今から考えれば、よくまぁそんな杜撰(ずさん)な考え方をしていたもんである。
それで失敗して、二人に私が写真を撮っていたことがバレていたらどうする気だったんだろう。
そんな事をつらつらと考えていた私は、部屋の中でガタガタという音がしたのにも全く気づかず、軽い足取りで準備室の中へと入っていく。
そして、
「さて、それではササッと撮影して帰りましょう!」
私はそう一人ごちると、握っていたスマホのカメラアプリを起動した。
そして、ドキドキしながら画面を覗き込む……が。
「あ、あら?そういえば、二人のいる教室ってどこなのかしら……」
スマホを構えたまま、私はあれ?と首を傾げた。