婚約者から逃げ切るだけの簡単なお仕事です。




そもそもの始まりは、友達の長谷川真凛が持ちかけてきた相談だった。



「ねぇねぇ真奈ちゃん!星華ちゃんと西山くんの仲をもっと近づけるためには、どうしたらいいと思う!?」


「……は?」



私は突然の質問に首を傾げつつも、とりあえず彼女の話を聞くことにした。


なんでも彼女は『オリエンテーション合宿』の最後にあった交流パーティーでペアになった際に色々と話していたらしい。


その中でも西山君が最も悩んでいたのが、、『いかにして星華を振り返らせるか』だったそうで。



「そこで、新聞部で情報通の真奈ちゃんに手伝ってもらおうと思ったの!」


「はぁ……具体的には何を?」


「あのねっ、星華ちゃんに『私と西山くんが最近アヤシイ』って噂を流してほしいの!
それを聞いたら、きっと星華ちゃんも慌てると思うんだ!!
題して、『ウワサ話で星華ちゃんを妬かせちゃうぞ大作戦』!」


「作戦名なっが!?しかも意外とセンスないね!?
……っていうか、その作戦って星華ちゃんが西山君のこと好きじゃないと成立しないんじゃ?」


「そこについてはノープロブレムだよッ!」



やけに自信満々な彼女はそう言って親指を立てると、めちゃくちゃいい笑顔でキッパリと言い切った。



「断言しよう――星華ちゃん、絶対に西山くんのこと大好きだよ!!」



……というわけで、星華の強引なプッシュと『星華の反応が知りたい』という西山君の依頼により、『ウワサ話で(ry大作戦』を決行する事になった。


まぁ個人的にも二人は両想いだと思っていたし、予想通りの反応が返ってくると予測して私も実行に移した。のだが。



『素晴らしいですわ!』



――ものすんごい予想外どころか、なんと予想の斜め上を行くリアクションを取られてしまった。




< 118 / 123 >

この作品をシェア

pagetop