婚約者から逃げ切るだけの簡単なお仕事です。




――一般人である私と真凛の常識としては、付き合っている二人が結婚を前提にするのが『婚約』だ。


だからこそ二人が婚約者だと聞いた時、『二人は付き合っているのだろう』と思っていた。


『振り返らせる』という今回の目的も、『きっと倦怠期か何かで遠ざかった距離を縮めたい』とかそういう意味だと解釈していた。


だが、実際は告白すらしていなかったとは……!



「……こりゃ、作戦も失敗するわけだわ」


「うぅ、勝手に勘違いして突っ走っちゃった……。ごめんね西山くん」


「…………いや、まぁ、大丈夫だよ。むしろ今回のことで俺が星華にどう思われてるか分かったし、これからしなきゃいけない事も判明したわけだし……」


「そうね。とりあえず、西山君は星華ちゃんにちゃんと自分の気持ちを伝えるのが先。
あと今回のことは、私が掴んだガセネタだったって事にして星華ちゃんにちゃんと説明すれば……」



その時、不意に私のケータイがメールの着信を告げた。



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