婚約者から逃げ切るだけの簡単なお仕事です。
【親切さんの登場です】
体育館にて無事に入学式を終えた私は、
イベントが達成できなかった不甲斐なさを抱えながら敬太様と共に校舎へ向かう。
張り出されたクラス表の前は、自分のクラスを確認しようとする人で賑わっていた。
「すごい人だかりですわね……」
「星華さんはここで待ってて。俺がクラスの確認をしてくるよ」
「いえ、そんな……!」
「むしろ、俺に行かせて?星華さんが行ったら、人混みに潰されちゃうんじゃないかって気が気じゃないよ」
「まぁ……。それではお願いいたしますわ」
エセ王子状態を維持する敬太様の背中が離れていくのを見ながら、
私はクラス表から少し離れた場所で立ち止まった。
そして、誰にも気付かれないように溜息をひとつ。
(あー、寒々しい会話だった……)