婚約者から逃げ切るだけの簡単なお仕事です。
【色々と間違っています】
朝に起きた時は、少し頭痛がするくらいだった。
学校へ行くために荷物を持って車に乗り込んだあたりで、だんだん頭痛がひどくなってきた。
そして――現在。
「……七宝院、大丈夫か?」
「だ、大丈夫ですわ……」
クラスのみんなと一緒に送迎用のバスへと乗り込んだ私は、
襲い掛かる頭痛と寒気をこらえながら自分の席で震えていた。
(あー、もう!なんでこのタイミングで体調を崩すのかなぁ私!?)
あれか?昨日、お風呂から出た後に身体を冷やしちゃったからか!?
それとも髪を乾かさなかったバチが当たった!?
ぐるぐると考え込みながら、私は持参したマスクを着用する。
前世のように『ゲッフォン!』とかオッサンくさく咳き込みたいところだけど、
クラスメイトの前なのでグッと我慢だ。
大和撫子を演じるのも結構大変だよなぁ……と今更のように実感していると、
隣の席に座っていた菅原様が少し困ったような表情をしながら飴を差し出してくれた。