婚約者から逃げ切るだけの簡単なお仕事です。
【私だってやれるんです】
「……やっぱり、私も参加したかったですわ」
ホテルに到着してから数時間後。
体操服に着替えた私は、障害物競争に興奮するクラスメイトたちを見ながら体育館の隅で膝を抱えた。
――必死で試みた説得も虚しく、結局私は見学組となってしまいました。残念。
(っていうか、ほんっとーに過保護過ぎないかなぁ二人とも!
どんだけ私は虚弱体質に見えるんだよ!!確かに私の今の外見は儚げな大和撫子だけどさぁ!)
口酸っぱく『無理はするな』と言ってきた敬太様と菅原様のことを思い出し、
私はムッと唇を尖らせる。
「心配してくださってるのは分かりますし、それ事態はとても有り難いのですが。
……でも正直、クラスのみんなと出たかったといいますか!」
「そうだよねー。私も出たかったなぁ……」
「えぇ、本当に残念で……って真凛さん!?いつから戻ってらっしゃったのですか!」
「んー?いま戻ってきたとこー」
思わずグチグチと不満を呟いていたら、いつの間にか真凛ちゃんがお手洗いから戻ってきていた。
私と同じく見学組となってしまった彼女は、よいしょと言いながら私の隣で体操座りをする。
……二人だけが見学組になってしまったこともあり、
私たちはお互いを『真凛さん』『星華ちゃん』と呼び合うほど仲良くなっていた。