No Title
「真由〜!」
入学式から1年経ち、わたしは2年生へと進級した。
「美奈子!もう、遅い!」
「ご、ごめん。ここまでくるのも大変でさ…」
目の前の彼女は桐生真由(きりゅうまゆ)。今日はクラス発表の日で、一緒に見ると約束していたのだ。
星稜高校は2年生時のクラス替えでは、成績順に振り分けられる。
「そりゃあ、美奈子は1組確定だろうけどさあ」
「そんなことないってば…、わたしより頭いい人たくさんいるでしょ」
「でも1年生のときの最後の成績、結構良かったでしょ〜」
「う、うん…我ながら」
「ふふ、そうやって認めるとこいいよね!
さて、心配なのはわたしだよもう。1組でありますように!」
「ありますように!」
わたしも真由にならって、両手をぱんっ!と合わせてクラス表の前で祈った。
周りから見たらよくわかんない光景だったろうと思う。
「…なにしてんの」
「1組になれますようにって」
するりと現れたのは圭太、東雲圭太。わたし、東雲美奈子の大切な幼馴染である。
真由と圭太とわたしは、小学校からずうっと一緒。ついでに言えば、圭太とわたしは幼稚園から。いや、もっと前かな?
とにかく、物心ついたときには側にいるのが当たり前になっていた。
「あぁ、だからね」
「なにが?」
「まだ見てないからこんななんだなあと」
「え、圭太もう見てきたの?」
「とっくに。こんな混んでるとこ行きたくないし」
なんと頭がいいことだろうか。
早起きが苦手な圭太ですら、この日は気合を入れているというのに…。
この学校は一学年に千人弱の人数がいる。
それなのにこんな効率の悪い張り出しでクラス発表をするのだから、結構面倒なのは事実。
でも、この日はなんとなくお祭りのような気分が味わえて、わたしは嫌いではない。
「もー、はやく見たい!」
「…はあ。道作ってやっから、着いてこい」
「!…ありがと圭太!大好き!」
「へぇへぇ」
左手で圭太のブレザーの端を掴み、右手で真由の手を握り、そのまま流れを割って進んで行くと、思ったよりもすんなりとクラス表の前に着いた。
「1組、1組…」
「あ、真由の名前あった!」
「うそ、ほ、ほんとだあ!あっ、美奈子も!」
「やったあ!同じクラスだね!」
ふたりで手を取り合ってぴょんぴょんと跳ねると、圭太がわたしの頭をぽすっと叩いた。
「…なあに。感動のシーンの邪魔して」
「え、俺への感動、ないの?」
「は?なんで?」
「え、桐生すら?ひどくね?美奈子の上見た?」
そう言われて、もういちどクラス表へと視線を戻す。
「東雲、え、ええっ!?」
「圭太、1組なの!?」
「おー、そうだぞー!よろしくな!」
…圭太ってそんなに頭よかった記憶がないんだけれど。
そう言おうとしたら圭太がにっこりと、綺麗すぎる笑みを向けてきたので口を閉ざしてそっぽを向いた。
本当は、胸がほっとしてる。
圭太は、わたしの大好きな幼馴染だから。