続・赤い流れ星




「ご、ごめんなさい!
あ、あの…冷凍食品がいっぱいあるので、今からそれを…」

「大丈夫ですよ。
とても身体が温まりそうじゃないですか。
それに…素材の味がよくわかって…
……野々村さん…ちょっとおたずねしますが…味付けはどうされました?」

「えっ…!?
あ…あの、アッシュさんに出汁の採り方を教えていただいて…
味付けはそれとは別にしなきゃいけなかったんですか?」

真顔でそんな質問を投げかけて来る野々村さんに、俺は思わず噴き出してしまった。



出来あがった粕汁は、見た目には申し分のないものだった。
考えてみれば、アッシュが付き添いながら具材の下準備をして、出汁も採った後だったのだから、それも当然だ。
野々村さんは、それらの具材を鍋に放り込んだだけなのだから。
ただ、そこに味をつけることに気付かなかったようだ。
酒粕を入れるから、それで味がつくと思ったのかもしれない。
そのせいで、口に運んだ粕汁は温かく風味も良かったが、味がなかった。
俺も最近は薄味に慣れて来ていたが、薄味なのではなく確実に味がない。



「とりあえず、塩でも振って食べましょう。
そしたらきっと大丈夫です。」

「でも……」

野々村さんは困ったような顔をしていたが、俺は黙って塩を振りかけた。



「うん、うまい!
これで、大丈夫ですよ!
野々村さんも食べてみて下さい。」

野々村さんはまだ浮かない表情をしてはいたが、俺の言う通りに塩を振り、そしてそれを一口食べるとすぐにほっとしたような顔に変わった。



「ほらね!
鍋のはきっともっとうまくなりますよ。」

「そ、そうですね!」

「それと…差しでがましいようですが…料理は出来あがったら、一応、味見した方が良いかもしれませんね。」

「は、はいっ!ごめんなさい!
次からは必ずそうします。」

つまらないことを言ってしまったと俺は後悔した。
深々と頭を下げる野々村さんの眼鏡の奥には、うっすらと涙が貯まっていたから。



「すみません!何も責めてるわけじゃないんですよ。
なれてなけりゃ、こんなことはよくあることです。
それに塩入れたらそれだけですごくおいしいし。
……あ、野々村さんも少しいかがですか?」

焦った俺は、グラスを取り出し、野々村さんにワインをすすめた。
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