続・赤い流れ星




(なんだか………)



長いようで短かった一日が終わり、部屋に戻った私はベッドの上で深い溜め息を吐いた。



恥ずかしいことをたくさん話して…
みっともない所をたくさん見られて…
でも…そのおかげで、私は一皮むけて生まれ変わったような清清しい気分だった。

昔は泣く事さえ出来なかった。
感情を顕わにすることはみっともないことだと父さんに言われてたから、私は悲しい時も嬉しい時も腹が立った時も、いつも同じ顔をしていた。
その反動なのか、両親が亡くなってからの私は時折感情が噴き出すようになってしまった。
堪えようとしても堪えられない事が増えて、昨日や今日みたいに人前で泣き出してしまうことも度々あった。



でも…今日は私の心の中からもうなくなってしまったんじゃないかって思ってた「楽しいこと」があった。
私にもまだ笑えるんだってわかったことがとても…嬉しかった。



そして……



(青木さんが好き…)



その気持ちを私は真っ直ぐに受け入れることが出来た。



もちろん、だからどうこうしようとか、そんな大それた望みは持ってない。
私は今までいろんな人とつきあっては来たけれど、本当に好きな人なんて一人もいなかった。
だから、きっと私は誰も好きになれないんだって思ってたけど、私にも人並みに誰かを好きと感じることが出来るってはっきりとわかったことが嬉しかった。
青木さんに対する気持ちは憧れ以上のもの…
好き…愛してる…
だけど、そんな気持ちを私は今まで認めることが出来なかった。
恥ずかしくて…どこか怖かったんだと思う。
そんな風に思っちゃだめだと思ってたのかもしれない。
もちろん、こんなおばさんが、しかもこんなぱっとしない私が青木さんに告白なんて出来るはずはないけれど、それでも、心の中で想うことくらいは許されるはず。



(青木さんが好き…!好き!大好き!)



声に出さなけりゃ許される。
心の中でそう想うだけで、私はこんなにも幸せになれる…
まるで少女のように胸が熱くなる。



幸せな状態を表現する時に人はよく「人生は薔薇色だ」なんてことを言う。
「薔薇色」がどんな色なのか、私にはよくわからない。
でも…きっと、その色はピンクを基調とした温かで華やかで春みたいな色なんじゃないかと思う。
なぜって…今の私の心の中が、今、そんな色に染まり始めているから…



事情はあるとはいえ、大好きな青木さんと一つ屋根の下にいて、一緒にごはんを食べたり話したり出来るなんて……私はなんて幸せなんだろう。
青木さんのためならこの命だって惜しくない!…なぁんて…そんな途方もないことを考える程に私の心の中は熱く燃えあがっていた。
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