続・赤い流れ星
side シュウ




結局、昨夜は一睡も出来なかった。
そうでなくても、最近の俺はろくに寝ていない。
どんなに酒を飲んでも眠くならず、毎晩遅くまでタカ達と遊び歩いて、家にも戻らなかった。
タカも迷惑だろうにいやな顔もせず、いつもと変わらない顔をして俺につきあってくれた。

ひかりはあれから家に戻ってくる事はおろか、連絡さえなかった。
あいつも必要なものはあるだろうに大丈夫なんだろうかと気にはなりつつ、俺から連絡をするとひかりに迷惑がられるかもしれないと思い、何も言わなかった。
そしたら、昨日ひかりからメールが来て…
俺の胸は一瞬奇蹟を予感して高鳴ったのだけれど……残念ながらそれは、今日、荷物を取りに行きたいという用件のみの冷たいメールだった。



(俺はふられたんだ…
ひかりの心はあいつのもの…もうやり直せることなんてないのに…)



俺は、朝から念入りに掃除をし、コンビニでひかりの好きなスイーツを買って、ひかりが来るのをそわそわしながら待っていた。
馬鹿だ…俺は捨てられたっていうのに、俺の気持ちはまだこんなにひかりのことを求めてる…なんて愚かなんだろう。



そういえば、ひかりと出会ってからはいつもずっと一緒で…
離れたのは、俺と和彦さんがカリスタリュギュウス流星群の奇蹟を調べに行った数日間だけだった。
だから、たった数日離れているだけで、俺の心にはぽっかりと大きな穴が空いてしまったようだ。
これから先、こんな調子で俺はやっていけるんだろうか…
女々しくて情け無くて…俺は、そんな自分にすっかり自己嫌悪に陥っていた。



(ひかり……)



その時、玄関のチャイムが鳴った。
ひかりは、鍵を持ってるはずだ。
だとしたら…誰なんだ?



「……はい。」

「わ、私……」

ぶっきらぼうな俺の声に返って来たのは、間違いなくひかりの声だった。



「ひかり…?」

慌てて開いた扉の向こうにいたのは、紛れもないひかりの姿。
俯き加減に、ひかりは小さく笑う。



「今、大丈夫?」

「あ、あぁ、もちろんだ。
さ、早く入れよ。」



鍵のことは気になったけど、なんとなくタイミングを逃してしまって聞けなかった。



「えっと…なにか食べるか?
スイーツ買ってあるけど…」

リビングに座ったひかりは、妙に落ち付かない様子だった。



「ううん、さっきお昼ごはん食べたばかりだから…」

「……そうか…
じゃ、飲み物だけでも…」

「うん。ありがとう。」

ひかりはそう言って、ソファの上から動かない。



(そうか…ここはもうひかりの家じゃなくなったんだな。
今日のひかりは「お客さん」だ…)



その現実がとても苦しかった…
苦しくて苦しくて……俺は叫び出したい気分だった。
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