続・赤い流れ星
side シュウ




「シュウ~!
わしじゃ。」

「なんだ、また来たのか!」

俺は、エントランスのロックを開いた。



あれから賢者は毎日俺の家に来ている。
ひかりが帰った日はなんだかんだ言って泊まっていき、一旦は帰ったのに、また次の日はうちに来た。
特になにかをするというわけではなく、ただお茶を飲んだり、他愛ない話をするだけだ。
きっと、俺のことを心配してくれてるんだと思う。



「シュウ、温かいミルクティーを煎れてくれんか?」

賢者は、ソファに腰を降ろすと同時にそう言った。



「はいはい。」

「はいは一つじゃ!」







「今日は、ほれ、いちごのエクレアじゃよ。
うまそうじゃろ?
それにしても、最近のコンビニは本当にスイーツに力を入れとるのう…」

「……じいさん……
俺なら大丈夫だから。」

俺は、この数日間なかなか言い出せなかった言葉をついに口にして、賢者はそんな俺の顔をみつめた。



「シュウ…無理はするなよ。」

「もう、してるよ。
今だって本当はとても辛い…
だけど、たとえ、町でひかりにあったとしても俺は平気な顔が出来る。
ひかりのためなら、どんなことだって、な…」

「シュウよ…なんと、健気な……」

賢者は声を詰まらせ、ローブの長い袖先で涙を拭った。



「……なんだよ、じいさん、そんなことくらいで泣くなよな。
ありがとな、心配してくれて……」

「そんなこと言われたら、わしは……」

賢者は、俺とひかりがこっちの世界に来るためにひかりが作り出した俄かキャラだ。
タカ達と比べたらつきあいはずっと浅いわけだが、賢者がこの世界に生み出されてからはけっこう親密なつきあいをして来たせいか、俺のこともとても親身になって心配してくれてたのだということがよくわかった。



「じいさん、あんたに湿っぽい顔は似合わないぜ。
ほら、いちごのエクレアでも食べて元気だせよ!」

賢者は黙って頷きながら、涙を拭う。

俺は大丈夫だ。
俺にはこんな風に心配してくれる賢者もいるし、毎日電話をしてくれる友達もいる。
ここあちゃんもメールをくれた。



(皆がいてくれるから、俺は大丈夫だ。)



自分に言い聞かせるように、心の中で何度も俺はそう繰り返した。



「……ところで、シュウよ……」

エクレアを一口かじった賢者がぽつりと話しかけた。



「なんだよ?」

「わしは少し気になることがあるんじゃ…」

「なにが気になるんだ?」

賢者は難しい顔をして、エクレアをさらにもう一口頬張った。
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