続・赤い流れ星




「ここから始まったんだよな……」



あの時は本当にびっくりした。
ひかりと別れることを決心し、未練がましく最後にもう一度だけ会いたいと言ったら断られて…
これから先どうしようかとぼんやりと考えていたら、俺はホテルの部屋にいたはずなのに突然ここに来ていた。
見た事のない風景だったから何が起こったのかここがどこだったのかよくわからなかったけど、賢者がそこでにっこり笑ってて、ひかりは「成功した!」って興奮してて…

ひかりに事情を聞いた時は、本当にびっくりした。
そして、真っ先に和彦さんやひかりのご両親のことを考えた。
ひかりがいなくなってから…皆、大変だっただろうな…
でも、これで終わり…
俺がいなくなったことをひかりも誰も気付かないまま、平穏な暮らしが取り戻せる…



(……もう誰も傷付いたり悲しんだりしなくてすむんだ……
あ、そういえば……)



俺は今頃になって、ちょっとした疑問にぶち当たった。
俺がいなくなったら…ひかりは…ひかりの世界の時間はどうなるんだろう?
会う前に戻るのか、それとも俺が存在しなかった今になるのか?
そんなことを考えていた俺は、思わず失笑してしまった。



(馬鹿だな…そんなこともうどうだって良いのに…
俺だって、ひかりのことを忘れてしまうんだから、どうなったって関係ないじゃないか…)



そうだ…俺は、この先もこの世界でシュウとして今まで通り生きていくだけ。
ひかりのことをすべて忘れ…忘れたことにさえ気付かずに…
そう思うと、感情が込み上げた。
こぼれそうになる涙を、俺は上を向いて必死に堪える。
これがひかりにとって一番良い方法なんだ。
ひかりの幸せこそが俺の幸せだ…
俺は、心の中で精一杯の強がりを言って、唇を噛み締めた。



(賢者の奴……遅いじゃないか!
何やってるんだ!)



早く済ませたい…
一分一秒でも早くこの苦しみから逃れたい。
今ならまだやめられると囁くもう一人の俺に抵抗するのももう限界だ。
助けてくれ!
誰でも良いから、早く、俺をこの苦しみから救ってくれ!



きっと、そんな長い時間ではなかったんだろうと思う。
なのに、この短い待ち時間は心が砕けてしまいそうな痛みを与え、俺はもだえ苦しんでいた。
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