続・赤い流れ星




「ひかり、ちょっと出かけて来るな。」

「えっ!?一人で?」

「……悪い?」

「別に悪いことはないけど……」



ひかりはそう答えながら、とても不安そうな表情を浮かべた。

それはまるで迷子になった小さな子供みたいに心細い表情で…思わず、俺はひかりを抱き締めたくなった。
抱き締めて「どこにも行かない」と囁きたい衝動にかられた。
だけど、あえて俺は何も気にしない素振りで外に出た。



(ごめんな…ひかり…)



行き先は、賢者の所だ。
ひかりのことについてはもう何度も相談したが、賢者でもその方法は思いつかなかった。
現実とこの世界を繋ぐあの門は相変わらず存在し、きっとこれさえ動けばまた戻れるのではないかと俺は密かに考えてはいるのだけど、先日も言った通り、この門を起動するという設定がない以上、それはどうにも出来ないことだった。
それがわかっていながらも、俺は諦めきれなかった。
話してるうちに今まで見落としていた何かがみつかるんじゃないか…そんな想いにかられ、俺は賢者とまたじっくりと話してみたくなったんだ。



「じいさん…いるか?」

俺はノックもせずに、賢者の家の扉を開いた。



「シュウか…あれ?今日はおまえさん一人なのか?」

「あぁ…」

「と、いうことは……また、あの話か…」

「……まぁな。」



俺が中に入ろうとすると、じいさんはそれを制した。



「のう…
せっかくじゃから、また、あそこへ行かんか?」

「……あそこ?」







「おぉ…これもうまい!
甘過ぎず、しつこすぎず、素材の良さが生きておる。」

じいさんは、モンブランを頬張り、うっとりしたように目尻を下げた。



「いえな…
この前食べたティラミスもとてもうまかったんじゃが、どうして今の季節にモンブランを食べんかったんかと後悔してな。」

「じゃあ、一人で食べに来れば良いじゃないか。」

「一人はいやじゃ…
やっぱり、甘い物は誰かと話をしながら食べたいからのう…
ま、この年じゃから可愛い女の子が良いとは言わん。
相手は誰でも良いんじゃが、わしには友達らしい友達はおらんからのう…
それにここに来れば、目の保養が出来る。」

そう言って、賢者は接客をするここあちゃんを見て目を細めた。
賢者のくせに、妙に俗化した奴だ。
ま、ひかりは完璧な人物よりもどこか少し抜けたような者が好きだから、つい、こんな風になるんだろうな。
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