青に染まる夏の日、君の大切なひとになれたなら。
◆第一章

転校生




七月の、はじめ。


梅雨のこの時期、雨は毎日のように降っている。

学校の窓ガラスに、パタパタと雫が打ち付けられていた。



「麗奈(レナ)ちゃーんっ」



廊下の窓から雨を眺めていたら、ふわふわの長い髪の女の子が、駆け寄ってくる。

あたし、小城(こじょう)麗奈は、いつも通り「ハイハイ」と言って振り返った。



「見てっ、見て!赤点じゃなくなったの!ホラ!!」


ぱあっと顔を明るくして、数学の解答用紙を見せてくる。

校内でも可愛いと有名な彼女は、滝本利乃(りの)。


その解答用紙には、斜線が引かれた赤い『28』の文字の横に、青色で『30』と書かれていた。


「採点ミスを見つけてね!修正してもらったら、赤点じゃなくなったんだよー!」

「よかったじゃん。追試受けなくて済んで」

「うんっ、うん!」


他の教科は悪くないのに、利乃は数学だけできない。

計算式が、『暗号にしか見えない』らしい。

あたしはガッツリ理系だから、よくわからないんだけど。


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