青に染まる夏の日、君の大切なひとになれたなら。
だから、朝のホームルーム後以来、今日利乃と池谷くんが話すことはなかった。
けれど時折、女子の利乃を見る目がやたら厳しくて、またこの子は敵を増やす体質だなぁなんて思ったのを覚えてる。
「短い期間だとは聞いてたけど、まさか一年で帰ってくるとは思わなかったなぁ。ふふ、びっくり〜」
…あれ。それって…
ニコニコ笑いながら話す利乃に、ひとつ疑問が浮かんだ。
「……連絡、取り合ったりはしてなかったの?」
自称大親友のトモも、連絡取り合ってたって言ってたし。
家が隣で、あんなに仲良さそうだったら、今日転校してくることを知っていておかしくないはず。
雨が、ポツポツと傘を濡らす。
ぱしゃん、と水溜まりを踏んだ。
「…んー、それは…」
利乃は一瞬気まずそうな顔をしたけど、すぐに取り繕うように笑った。
「連絡先、聞くの忘れちゃっててさ。手紙とかはやりとりしてたんだけどねー」
……色々と、突っ込んで聞きたいことも、あったけど。
でも利乃の表情が、それ以上聞かないでって言ってるみたいで。
「……そっか」
あたしが返したのは、その一言だけだった。
…池谷くんと、利乃が幼馴染。
雨の上がった空を見て、傘をたたむ。
傘から雫が、ポタポタと落ちた。
澄んだ優しい空気に目を細め、鼻を動かす。
…雨上がりの、じんわりとした匂い。
不思議と、池谷くんを思い出させた。