青に染まる夏の日、君の大切なひとになれたなら。


…目を奪われたのは、あの綺麗な容姿だけじゃない。

その穏やかで、掴み所のない雰囲気が。

動き出したいと焦る、私のなかの『雨音』を、強くしたからだ。






それから数日経って、池谷くんはすっかりクラスに馴染んだ。

自称大親友というのは嘘ではなかったらしく、トモとよく一緒にいるところを見かける。

あたしはあたしで、利乃と一緒にいるために、必然的に彼とトモと顔を合わせることが多くなっていた。


「あっ、慎ちゃん!」


朝、利乃と教室へ入ろうと廊下を歩いていると、トモと池谷くんの後ろ姿を見かけた。

利乃が駆け寄ると、池谷くんは笑う。

トモが「おはよう」と言うと、利乃が「トモくん、おはよう」と返す。

あたしはその少し後ろで、三人の姿を見ていた。


…三人は、同じ中学だったんだし。

仲良いのは、わかるんだけど。


…最近、この三人とあたしっていう構図が、多くなった気がする。

利乃、池谷くんと話したいのはわかるけど、あたしを放置しないでほしい。

ひとりでいじけながら後ろを歩いていると、トモがあたしへ振り返った。


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