青に染まる夏の日、君の大切なひとになれたなら。
…目を奪われたのは、あの綺麗な容姿だけじゃない。
その穏やかで、掴み所のない雰囲気が。
動き出したいと焦る、私のなかの『雨音』を、強くしたからだ。
*
それから数日経って、池谷くんはすっかりクラスに馴染んだ。
自称大親友というのは嘘ではなかったらしく、トモとよく一緒にいるところを見かける。
あたしはあたしで、利乃と一緒にいるために、必然的に彼とトモと顔を合わせることが多くなっていた。
「あっ、慎ちゃん!」
朝、利乃と教室へ入ろうと廊下を歩いていると、トモと池谷くんの後ろ姿を見かけた。
利乃が駆け寄ると、池谷くんは笑う。
トモが「おはよう」と言うと、利乃が「トモくん、おはよう」と返す。
あたしはその少し後ろで、三人の姿を見ていた。
…三人は、同じ中学だったんだし。
仲良いのは、わかるんだけど。
…最近、この三人とあたしっていう構図が、多くなった気がする。
利乃、池谷くんと話したいのはわかるけど、あたしを放置しないでほしい。
ひとりでいじけながら後ろを歩いていると、トモがあたしへ振り返った。