青に染まる夏の日、君の大切なひとになれたなら。


……『麗奈』。

優しくてよく通る、彼の声がそう呼ぶ。


小さくても一歩、近づけた気がした。






『慎也』。


そう、麗奈ちゃんは呼んでいた。


「……トモくん」

忘れ物を取りにいった校舎は、運悪く七時の五分前に閉まっていた。

だから、私とトモくんは仕方なく、引き返してきたんだけど。


「………うん」


麗奈ちゃんと慎ちゃんが、まだ手洗い場で話している。

私とトモくんは、その近くの壁際で、隠れるように立ち止まっていた。


空はもう、茜色に染まっている。

見上げながら、小さな声で彼の名前を呼んだ。

トモくんは、そう一言返事をしただけ。

俯いている彼の目は、いつものように明るくはなかった。

肩が、彼の腕にぶつかる。

ふたりの笑い声が、遠くに聞こえる。

私はトモくんを横目に見て、目を閉じた。


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