青に染まる夏の日、君の大切なひとになれたなら。
店員が慣れた手つきでクレープを作っていくのを眺めながら、あたしは口を開いた。
「……なんかね、慎也、今…」
遠くで、子供の笑い声が聞こえる。
くるりと、クレープ生地が丸められた。
「好きな人、いるんだって」
ざわ、と。
外の音がすべて、消えたような感覚がした。
店員が、クレープを紙のケースにいれる。
隣から返事が聞こえなくて、ちらりと視線を移した。
「………利乃?」
その瞬間、利乃が我に返ったようにハッとする。
驚いたように目を見開いていた彼女は、すぐにこっちを向いて「ほ、ほんとに!?」と取り繕うように笑った。
…え、なに。
「慎ちゃんがそう言ったの?」
「…うん…利乃、なんか知ってる?」
「ううん、知らない〜。慎ちゃん、なんにも言ってくれないからさぁ」
そっかそっかぁと笑いながら、彼女はクレープを受け取る。
そのごまかすような表情に、「うそっ」と思わず声を上げた。