青に染まる夏の日、君の大切なひとになれたなら。
……大雨。
なのに、今日に限って折り畳み傘を忘れてきた。
朝、電車に間に合わなくなりそうで、急いでて。
朝の時点で雨は降っていなかったから、つい忘れていた。
ザー……と雨がしきりに降っている。
辺りは霧がかかったみたいに曇っていて、あたしは目を細めた。
…こんな雨の中、バス停まで走ってもびしょ濡れになってしまう。
いつもなら、利乃に相合傘を頼むところだけど。
実は今日、利乃は家の事情で早退した。
だから、今日はあたしひとりで帰る。
こういう日に限って、傘を忘れるなんて。
ついてないっていうか、ため息が出るんだけど……
さてどうしようか、と靴箱の前で立ち止まっていると、不意に近くで足音がした。
「…小城さん?」
その優しい声に、思わずビクッとする。
振り返ると、案の定『彼』だった。
「…池谷くん……」
彼は靴に履き替えながら、昇降口で立ち止まっているあたしを、不思議そうに見ている。